▲我が家の秋の遠足として、大阪 四條畷市にある[むろいけ園地]というトレールコースのある山というか、自然公園というか、そこに出掛けることにしています。というわけで今日もちょっくら出掛けるかということになりました。上の娘は東京に出てしまっているので同行できません。また下の娘も[ひらパー]のレストランでバイトをしているのでダメ。僕とヒヨコとクープで出発。コンビニでおにぎりと飲み物も買いました。
で、カメラは、Leitz M6を持って行くことにしました。本格デビューです。レンズは、COLOR-SKOPAR 35mm F2.5にしよう。うれしいな。最近はライカとご無沙汰だったけど、昔はどこへ行くにもぶら下げて行ってました。散歩はもちろん、近所に買い物に行くときでも。クルマの運転中も首から下げてました。その気分がまた戻ってきました。…なんて喜んでいたのですが、これが後ほど奈落の底へ突き落とされることになるとは、このときは誰も考えなかったのです。
さて、[むろいけ園地]は、我が家から17キロ弱なんで、まあ軽いドライブとしてはちょうど良い距離です。駐車場もちょうど1台分あいたところでなんとか停められました。
▲クープも張り切って歩きます。トレールコースの外回りを選んで、さあ森の中へ。ここでInstagramに投稿。この先は電波がなくなるのでここでやっとかないと(笑) そのとき上げたのがこの写真です。
山道に入って、ライカで写真を撮ったり、iPhoneで撮ったりしながら歩いていきました。空気は冷たく、日が陰るともう寒いです。でもこれぐらいの方が歩くにはちょうどいい。しばらく歩いていると身体が熱くなってきますからね。
▲紅葉はほとんど見られませんでした。まだちょっと早かったですね。2週間ぐらい後にもう一度来た方がよさそう。しょうがないので、こういう看板を撮りましょう。なんかデザインが可愛くて、古いものではないけどどことなく懐かしい感じがするので、いつも撮ってしまいます。大阪府下の自然公園ではこの看板はよく見かけますけどね。この看板もカラーリングが違うタイプがあって、これにも凝り出すといろいろあるんですよ。
この[むろいけ園地]のひとつの見せ場である池のところにきました。ここが紅葉してたらほんと美しいんですが、紅葉はほぼゼロでした。そこを過ぎて、またトコトコと歩いて行きます。そしてライカでちょっと写真を撮ろうと思った時です。
「あれ? なんかぼやけるなぁ」
ファインダを覗いてピントを合わせようとするんですが、全体にぼやけているんです。よく考えると、ライカです。一眼レフじゃないんです。ピントが合ってなくても、ファインダの中の像はぼやけるなんてことは起きるはずがないんです。
「いや、待てよ。今日のメガネはうっかりと読書用メガネを掛けてきた。これフレームが柔らかい素材だからねじりすぎたらレンズが外れることがあるというてた。メガネのレンズが外れたんやな。あれ、普通に見えてる。あ、レンズあるしぃ〜」
▲なんだか、ファインダの覗くところが変です。なんか寂しいんです。
「ワッ! ウソやろ〜、ウソやんな、ウソやんな…」
しかし、ウソではありませんでした。ファインダの覗くところ。接眼部に、Leitz M6の場合はパッキンのようなゴムのリングが付いています。これはメガネ者が使用する場合、レンズに傷が付かないようにするためです。それが見当たりません。このゴムリングは実はそこにレンズも付いていて、そのレンズがあって初めてファインダの中を覗いたときにちゃんと見えるようになっているわけです。そう、この接眼部のレンズが欠落しているということなのです。確かにさっき写真を撮ったところではなんの違和感も感じませんでした。ということは、歩いている途中で落としたということになります。
そろそろお昼を食べようという雰囲気になっていたんですが、それどころではなくなってしまいました。こんな山道。しかもアップダウンも激しいトレールコースで、直径2センチにも満たない接眼レンズを探し出すなんてことは、不可能です。でも来た道を戻ってみなくては気持ちがおさまりません。ダメ元で来た道を引き返しました。ヒヨコとクープはどこかで待っていてくれるように言いましたが、一緒に付いてきて探してくれました。
紅葉はまだとは言え、道は落ち葉と泥と砂利と、そんな道で小さなレンズがポロッと落ちていて見つかるでしょうか。しかも今日は同じコースをたくさんの人が歩いています。悪ガキも通っていきました。なんか見つけたら蹴飛ばしているかもしれません。そんなことはなくても、僕が落としたときに、はねて崖下に転がってしまっていたら絶対に見つけることはできません。30分ぐらい掛けて最後にシャッターを切った場所まで戻ってみました。目は文字通り血眼になって地面を見つめて歩きました。でも、みつかりませんでした。
あきらめて、池のところまでまた戻りました。そこで、
(もう、いいや…)
と思いました。しかし、これではカメラとして全く役に立ちません。せっかく今日、ライカ生活リスタートの記念に持ち出してきたのに。なんという不幸でしょう。暗い気持ちのまま、池の縁に座り、おにぎりを食べ、お〜いお茶を飲みました。なんとかお腹はふくれましたが、心はしぼんだままです。それでも、楽しいハイキングをこのまま台無しにはできません。普段なら不機嫌になっていたはずのヒヨコが今日はなぜかやさしく一緒に探しながら歩いて戻ってくれたんです。だからあきらめることにしました。修理に出したらM6とはいえライカです。接眼レンズ一つでもさぞかし高いことでしょう。パーツだけ取り寄せることってできるのかな? それでも高いだろうな。それにいちいち面倒だな…、などと考えるとほんとうにやりきれない気分になりましたが、いやそれは今から後は顔に出すまい。そう思いました。それでも明るく振る舞うことはできませんでした。言葉数は少なくなってしまいましたが、なんとか立ち上がり、先のコースに進みました。もうちょっと先までさっきは歩いていたはずです。そこまではやはりあきらめたとはいえ下を向いて歩こう、と。もちろんさっきもうちょっと先まで行っていたんで、逆に戻っていくときには見たはずですが、念のため地面を見て歩きました。
「ん?」
その時です。僕の目は何かに吸い寄せられました。
▲なんということでしょう。
「ワッ、ワッ、わわわわわわわわわわわわわ〜ッ!」
奇蹟です! 奇蹟が起きたんです。そうそこに、足下に接眼レンズが落ちていました。戻っていくときにもちゃんと見たはずで、そのときには見つからなかったんです。それにこのコース、あれから何人も人が歩いています。それでも踏んづけられたり、蹴飛ばされたりせずに、今そこに落ちたみたいに、ほとんど汚れもなく落ちていました。
▲少しだけ付いた砂をはらって、M6に取り付けました。このレンズははめ込み式でも接着でもなく、ネジが切ってあるので緩んでいたのでしょう。それに気づきませんでした。
▲というわけで、無事に接眼レンズは戻ってきました。その後も写真を撮ることができました。僕は世の中全ての神様、仏様に感謝したい気持ちでいっぱいでした。そして、いつもだと僕が失敗をしでかしたら容赦なく叩きのめすようなヒヨコが今日だけはなぜか優しかったことに感謝、と日記には書いておこう。
★写真のシーンは再現フィルムです。実際のシーンとは違う場合があります。
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